就業規則の作り方
会社の就業規則を整えた際、労働法周りを調べたときのメモ。
私自身は法律の専門家ではなく、労働法についても素人なので、もし間違いなどあればご指摘いただきたい。
なお、参照している法律等は2017年8月現在のものである。
就業規則とは
労働者の規律や労働条件を定めた規則を指す。
厚労省のサイトには以下のように書かれている。
常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされています。就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。
どうやって作る?
厚労省や労働局のサイトに就業規則のサンプルが掲載されているので、就業規則を自力で作る場合はこれをベースにしていくのがオススメ。
社労士さんなどにお任せするのもよいと思う。
労働基準監督署長への届け出
労働基準監督署長への届け出が必要となるのは「10人以上の従業員を常時雇用する場合」と定められているが、従業員を増やす予定があるなら早めに準備しておいた方がよいと思う。
就業規則に明示すべきこと
労働基準法第89条により就業規則への記載が必須となっているのが、以下の項目である。
- 勤務時間、休暇などに関すること
- 賃金に関すること(臨時の賃金、最低賃金)
- 退職、解雇に関すること
- 労働者に食費、作業用品などを負担させる定めをする場合、これに関すること
- 安全および衛生に関すること
- 就業訓練に関する定めをする場合、これに関すること
- 災害補償、業務外の傷病補助に関する定めをする場合、これに関すること
- 表彰および制裁を定める場合、その種類と程度に関すること
- 上記のほか、労働者すべてに適用される定めをする場合、これに関すること
関連する法律
モデル就業規則をベースに自分で作る際は、この辺りを見ながら調整していくのがよいと思う。なお、就業規則として明示していない事柄や、労働者が不利になるような内容に関しては、基本的に法律準拠・法律優先となる(はず)
労働基準法第13条には、以下のような記述がある。
この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。)
作成時のポイント
自分が就業規則を整備する際、特に留意した点は以下。
(在籍時、諸事情により整備しきれなかった点も含まれる。)
労働契約の締結に関すること
労働条件の明示
事業者が労働者を雇い入れる際、下記を明示するのが義務となっている。
これは労働基準法第15条による。
雇用契約書とか、雇用条件通知書などの文書で明示するのが一般的だと思う。
- 働く場所、従事する仕事の内容
- 契約期間の定めの有無
- 有期労働契約の場合は期間、更新の判断基準
- 労働時間に関すること
- 始業終業時刻、休日、休暇
- 賃金に関すること
- 給与の計算、支払い方法、締め切り、支払時期、昇降給
- 退職、定年、解雇、契約期間の終了など
試用期間
中小企業では一般的に3ヶ月で設定しているところが多い気がする。
自分が見たものだと、最長でも6ヶ月。
会社側が長すぎる試用期間を設けたことにより敗訴した判例があるようなので、1ヶ月~6ヶ月の間にしておくのが無難っぽい。
退職
ここには自己都合による退職のほか、定年や解雇に関する事柄も含まれる。
解雇周りについてはよほどのことがなければ適用されないと思われるが、繊細なところなので、少し丁寧に作っておいた方がよいかもしれない。
賃金に関すること
この辺りは賃金規程として切り出していた。
賃金規定には残業や休日出勤時の賃金の計算式などを記載。
休暇に関すること
年次有給休暇
使用者は一定の条件を満たしたすべての労働者に対して、年次有給休暇を付与しなければならない。これは労働基準法第39条による。
広島県商工労働局のサイトにある説明が読みやすくてよい。
労働基準法第39条|労働相談Q&A|わーくわくネットひろしま
付与される日数
入社後半年経過で付与され、その後は1年ごとに付与される。
付与される日数は勤続年数により異なる。
勤続の期間や出勤時間により、最低限付与される日数が定められており、これを下回る日数にすることはできない。
時間単位年休
年次有給休暇は1日単位で与えることが原則となっている。
これに関しては労使協定を結ぶことにより、1時間単位での消化が可能となる。
ただしすべての日数を時間単位で消化することはできない。
1年で5日分が上限となる。
有給取得
有給取得の申請時、休暇理由は必須ではなく任意である。
使用者側は、理由により有給取得を拒否することはできない。
使用者側には一応時季変更権があるが、行使するのはなかなか難しそう。
(とはいえ実際には、上長や同僚と相談して有給取得するのがよいと思う)
産前・産後休業
出産に関する決まりは、労働基準法第64条の2から第66条に定められている。
産前産後に関する規定は第65条。
産前
産前6週間(多胎妊娠 = お腹の中に2人以上いる場合は14週間)、女性が請求した場合は休暇を取ることができる。
産後
産後8週間の女性を就業させることはできない。
ただし産後6週間を経過後、女性本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務については、就業させることができる。
これをひっくり返すと、産後6週間を過ぎるまではいかなる理由があろうとも就業禁止ということになる。
安全衛生に関すること
健康診断
事業者は労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対し、医師による健康診断を実施しなければならない。労働者側もまた、健康診断を受ける義務がある。
雇用時と年1回の受診が必要。
ちゃんと受けよう健康診断。
ストレスチェック制度
2015年より、労働安全衛生法第66条の10に追加された制度。
従業員数が50人を超えた場合、ストレスチェックの実施が必須となる。
なお2017年現在、50人未満の会社については努力義務となっている。
改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について(PDF)
自分が就業規則を整えたときは50人未満だったので、テキストチャット上で軽く発言しただけにとどめ、文書化は行わなかった。
労使協定
労働者と会社との間で締結される協定のこと。
裁量労働やフレックスタイム、時間単位年休の導入にあたっては、労使協定の締結が必要となる。時間外労働・休日労働については労働基準法第36条に基づく労使協定、いわゆる36協定の締結が必要。
最後に
他にもいろいろあるけど書ききれなかったので割愛。
上記には自分が担当した際に整備しきれなかった内容も含まれる。
タイトルの「就業規則の作り方」については最初の方にも書いたけど、モデル就業規則をベースに作るか、士業の方にお願いするのがよいと思う。
普段それほど参照されることのない就業規則だけど、改めて見てみると知らなかったことが書いてあったりしておもしろいかもしれない。
参考書籍
- 作者: 布施直春
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読みやすくてよかった。
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「ルールを作るなら韓非子とか参考になるかも」と言われて渡された本。
結局ちゃんと読んでいないのだけど、法家が目指していたものと、法家の視点に欠落していたものについては興味深かった。以下は湯浅氏の著書からの引用である。
人徳などという不安定な要素に頼るのではなく、よりオートマチックな法、システマチックな官僚体制に委ねるべきだというのが法家の主張であった。しかし、その法を制定し運用するのは、結局人である。その人とは何かという問題を、法家は棚上げにした。厳しく迫れば人は法に従うものだと単純に考えてしまったのである。