年次有給休暇の話
技術書典3で頒布したコピー本「文鳥と読む労働法」の内容に誤りがありました。
おもな訂正箇所は年次有給休暇の斉一的取扱いについてです。
訂正も兼ねて、年次有給休暇の項を公開します。
参照している法律は2017年11月現在のものとなります。
なお、書いている人は法律の専門家ではありません。間違いやお気づきの点などありましたらご指摘いただけると嬉しいです。
年次有給休暇とは
一般に「有給」「有給休暇」「年休」とも呼ばれている制度です。
年次有給休暇については労働基準法第39条に定められています。
いつ、どのくらい付与されるの?
入社日から半年経過後に最初の年次有給休暇が付与されます。
試用期間も日数にカウントされます。
全労働日の8割以上出勤した労働者に対して付与される、年次有給休暇の日数は以下の通りです。
勤続年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
年次有給休暇の時効
労働基準法第115条に以下のような記述があります。
これにより、就業規則に「年次有給休暇は付与された日から2年間有効(翌年まで繰越可)」と定めている会社が多いと思います。
この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
年次有給休暇の斉一的取扱い
入社日に関係なく、一定の基準日に付与するケースもあります。
これを斉一的取扱いと呼びます。
たとえば6月に入社したケースを例にしてみましょう。
各人の入社日に合わせて付与する場合は入社半年後の12月に10日、翌年12月に11日の年次有給休暇が付与されます。
斉一的取扱いを導入しており、基準日が4月1日の場合はどうなるでしょうか。
翌年の4月まで年次有給休暇が発生しない?そんなことはありません。
入社初年度は入社半年後もしくはそれより前に10日、翌年の4月1日には11日の年次有給休暇が付与されます。
使用者は労働者が出勤したものとみなし、前倒しで付与する形になります。
時間単位休暇
有給休暇は基本的に、1日を単位として消化します。
労働者と使用者の間で協定を結ぶことで、最大5日を上限とし、時間単位での消化が可能となります。これは労働基準法第39条4項に定められています。
時季変更権
労働基準法第39条5項には「労働者が請求する時期に与えなければならない。ただし事業の正常な運営を妨げる場合は他の時期に与えることができる。」という記述があります。この「他の時期に与える」権利は時季変更権と呼ばれます。
しかし時季変更権を行使できるのはあくまで「正常な運営を妨げる場合」に限られます。たとえば多くの労働者が同じ日に休暇を取り、業務に支障が出るケースはこれに該当します。
有給申請理由
理由の提出は必須ではありません。
あくまでも任意であり、通常は「私用のため」で十分でしょう。